勉強会レポート『松田先生になんでも聞いちゃおう!』

こんにちは!

以前、おとかわ会(大人たちから変わろうの会の略称です)のLINEグループで「不登校」という言葉をもっといい言葉にしたいよね、という話が上がったことがあります。

5月16日に開催した『松田先生になんでも聞いちゃおう!』の勉強会では「在宅部(不登校)」という言葉がありました♡

本日のブログはその勉強会についてご紹介します。

 

参加者から事前に質問を集めて答えてもらうこの企画。なんと19個もの質問が集まりました!

質問者と松田先生との個別面談なく、回答をお願いしたため

「片道通行の情報のやりとりですし・・・みなさんの求めているものに完全にたどりつくのは難しいとも考えています。」

と前置きした上で、

 

パートI.  支援するということ

パートII. 発達の凸凹に関する基本的な考え方について

パートIII. 「将来への不安」と「学習」について

 

の3パートに質問を分類し、正しい知識にもとづいた説明を加えて回答くださいました。

その中の1つ

 「わかってもらえない…」ご家族の中での考え方の違いについて

をみなさんにシェアさせてください。

(質問者様と松田先生にご了承を得て公開しています)

     

* 質問 *******

家族の関わり方ですが、夫が、私が子どもたちに寄り添うような、子どもたちとの関わり方がどうしてもできません。定型発達の子どもたちと同じものを求めてしまうのか?食事中にじっと座っていられなかったり、イライラがあったりする時に、寄り添うのではなく威圧的な態度で接してしまったりすることもあります。相談機関の心理の先生や、病院の先生のアドバイスを一緒に聞くのも嫌がりますので、カウンセリングやたまの登校、放課後等デイサービスの送迎、付き添いは全て私(母)です。

(相談している1~2年の短い期間しか知らない人に、今まで子育てしてきた期間一緒にいる自分にダメ出しされるのがとても気にさわるようです。。。)

私自身も、今では、ワンオペが当たり前ですし、夫にはあまり多くを期待していません。

子どもたちに寄り添う事に全パワーを投入する結果、夫にどうこう、というパワーは残らないからです。。。

それもいけないのでしょうが、

子どもたち(ASDの子とADHDの子)にとって唯一の理解者が私、という感じになっているのだろうな。。。という家族になりつつあります。

夫も、祖父母もひっくるめて寄り添えるような家族でありたいとは思っていますがどのようにすればいいのでしょうか?

 

 

* 回答 *******

ご家族が協力的ではないというのは、大変厳しい状況だと思います。

 

「子どもたちに寄り添う事に全パワーを投入する結果、夫にどうこう、というパワーは残らないからです。。。それもいけないのでしょうが…」

 

いやいや、いけなくないと思います。お母さまが毎日毎日、全パワーを投入されている感じが、こんな少しの文面からもとても伝わってくるので、実際にそれを経験しておられるお母さまのご苦労はよっぽどのものなんだろうなとお察しいたします。ワンオペも当たり前ということで、本当にお疲れさまです。お母さまはこんな中、一体、どういうことがあって毎日なんとかこなしておられるのでしょうか。何か支えになっていること、支えになっている時間や、想い、どんな小さなこともでも良いです。夜に缶酎ハイを飲むのが唯一の楽しみとかそんなことでも構いません。余裕がないかとは思いますが、もし可能であれば、全部出尽くすまで一つずつ書き出してみるのもいいかもしれません。そして、そこででてきたことを、ぜひ今後も大切にされてくださいね。

 

さて、お父様の件ですが「相談している1~2年の短い期間しか知らない人に、今まで子育てしてきた期間一緒にいる自分にダメ出しされるのがとても気にさわるようです…」ということで、「ダメ出しされるのがとても気に障る」って、むしろ当然のことだなと私は思います。私も、検査の時とかに、「こんな1,2時間で、ちょっとした一部分をのぞけるかもしれないけど、全容はわかりっこないです。親御さんがお子さんのことを一番わかっているはずなのだから、ぜひお子さんのことを教えてください!」とお願いすることが多いです。「ダメ出し」なんてとんでもないです。むしろ、どんな風にやっているのか、教えてくださいというスタンスです。もし、過去に、お父様のことを「ダメ出し」して傷つき体験をされたことがあるということであれば、その支援者はあまり上手な人ではないな~という気がいたします。小さい子を持つ親御さんに「ダメ出し」をして傷つけるのは本当にやめて欲しいなといつも思います。そういうことで親御さんがシャッターをおろしてしまって、子どもが大きくなった時にご家庭にアプローチできない状態になってしまうことがしばしばあるので。(あまり関係ないかもしれませんが、私は個人的に、しまじろうが嫌いです。しまじろうママ、ちょっと気持ち悪いと思います。しまじろうママの存在は、ある意味、ダメ出しですね。あれを見て、私は違う!全然できてない!と傷ついている母が日本中にたくさんいるのではと感じています。)


じゃあどうやっているのか?と聞かれそうですが、私の場合、みなさんに対してそうですが、昭和な考えの人とお話しさせていただく時には特に、まずその方の思いをしっかり教えていただくことが多いです。どういうことを私との面談で扱えれば役に立ったと思ってもらえるのか、そして、どういうところからそう思うのかと聞いていくと、みなさん、たいていは「お子さんのことを思って」という話が出てきます。そしてお父様がすでにやっていることを聞いていくと、お子さんの役に立っていることがあったりするので、そういう部分を丁寧に扱いながら整理をしていくと、あまり衝突しません。その方をねぎらいながら、その方のやっていることの中でやはり、うまくいっているところに注目していくことが多いです。ただ、こういうことを、お母さまがお父様にしてくださいという話ではまったくないです。プロとしてどんな風にやっているかの簡単なご紹介です。

 

本文にもどりますと、この情報だけだと何とも言えないですが、今の時点でお父様やそのご家族(祖父母)にいわゆる子どもたちに寄り添うような、子どもたちとの関わり方をお願いしてもそのように「わかっていただく」ことは難しいのではないでしょうか。また、このご家族だけではなく、このような状態に残念ながらなってしまうご家族は結構多いです。特に祖父母がこの状態になって、ぐいぐい来られると非常に難しくなります。どうしても昭和な考えが抜けなくて、何度説明しても「ものの見方」「視点」がかわらないということだと思います。いわゆる、しつけ的なことを厳しくしているということですよね。きっと。昭和な考えの人は、お子さんの将来のために厳しくすべきだ!とかたく信じておられると思いますし、それは「ものの見方」の話ですから、どっちも正しいということにはなると思います。「将来のために厳しくすべき、子どもはただ甘えているだけ」というものの見方も、「ADHDで座っていられない状態だから支援が必要」というものの見方も、主観の話なのでどちらかが正しくてどちらかが間違っているということではないかもしれません。ちゃんと証明できないのですから。そもそも診断は医者が下すものですが、医者が言うことがすべて正しいわけでもなく、お父様ご家族がそんな医者の言うことを鵜呑みにするとは思えません。お父様ご家族の文化の中では、今日までずっとそれが正しいこととして通ってきたはずです。ただ、一つ言えるのは、「甘えているだけ」というものの見方で行った対応はおそらくうまくいかないことが予想できるということです。そういう意味ではお母さまの見方でやっていただきたいと私も思いますが、将来、お子さんがどうなるのか、それぞれの対応でくらべて証明できる話でもないので、お父様にお母さまが言っていることが正しいと伝えても説得力に欠けますね。

 

「夫にどうこう、というパワーは残らないからです…」ということですので、今はこの省エネ運転で乗り切った方が良さそうに感じます。ただでさえ大変な状況なので、わかってもらうことにパワーを使わない方が良いということです。いろいろやって、よけいこじれてしまって、お母さまが倒れてしまっては大変です。ぜひ、ご自身のことも大切にされてください。一つ、強いて言うなら、「わかってもらう」ことは難しくても、「もめないでおだやかにすごす」工夫はできるかもしれません。「わかってもらえる」のであれば、それが一番良いことですが、現時点ではそれが難しい様子ですので、今は、そこは置いておいて、ともかく、極力、「もめずに、おだやかに」というところを目指してみると良いかもしれません。「カウンセリングやたまの登校、放課後等デイサービスの送迎、付き添いは全て私(母)」ということで、かなり賢い能力のあるお母さまであると推察しております。こんなお母さまであれば、おそらく、極力「もめずに、おだやかに」やりすごす工夫はもうすでに、きっとされていると思います。

もしかすると、子ども達もすでにそんな工夫をしているかもしれません。お父様が機嫌が悪くなったらスッと自分の部屋にいなくなる…とか、お父様がかえってこられたら怒られるようなことをやめるとか。お母さまも、きっと、「こんな風にしちゃったらもめごとになっちゃうから、とりあえず、いまはこんな風にしておこう」みたいなことをされていますよね。そこは今後もより意識できると良いのではないでしょうか。

 

また、「わかってもらう」のは難しくても、「おだやかにすごす」ことが大事と思える昭和な人はいるかもしれません。文面から読み取る限りでは、このお父様ご家族の場合は難しそうですが、人によっては、思い切って腹を割って話して、「わかってもらう」ところは難しくても、せめて「おだやかにすごしたい」というところで適度な距離を保つように協力してくれる場合もあるかとは思います。また、たたいたりすることがあるのであれば、子どもが外で誰かに言ってしまったことで、父親に虐待であるという話をしたことで、特徴を「わかってもらう」ことはできていなくても、「行動」をかえてくれるようなこともしばしば経験しています(ちなみに、お母さまに対してもDV的な要素がひどいのであれば、それはまた別な話になっていきます)。

そんな風に過ごす中、ぜひ、家族の中でみんなが穏やかにやれている時に注目してください。いつも常にバトル状態ということではないはずです。繰り返しになりますが、人間の生活には波があるので、ご家族の中でうまくいかないこともあれば、ましな時もあるはずです。そのましな時に、家族の中で一体何が起こっていたかをよくよく観察してください。特に、その前後に、ご自身がどのような動きや言動をされて、どのような状態だったか。そこが重要です。そして、その後に、そのようなことを生活の中で意識をしてみて、そこを膨らますようなイメージでやっていけると理想的です。

まとめると、お父様や祖父母に変わってもらうことを促すのではなく、なるべく「もめずに、おだやかに」やれるように、ほどよい距離感?を取れるように、こっそり、ひっそりと子どもや母親の方が上手に動くということの方が良いかも…ということです。そんなことをしながら、もし可能であれば、みんなが穏やかにやれている時に注目し、そこをヒントにそれをふくらませるような工夫も試みてみる…難しいことも多いかとは思いますが、すでにやっていることがあるのであれば、根気よくお続けになると良いかと思います。こんな風にお続けになることで、いつか何かいいきざしが見えてくることもあるかもしれません。

 

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これを読んでいただければ、この勉強会がどのようなものだったか、説明は何ひとついらないと思います。


穏やかにやれている時に、うまくいった時に注目する。

それを生活の中で意識して膨らますイメージでやっていけるといいですね。


どの質問の回答にも先生の人柄と懸命に寄り添ってくれようとする姿が感じられました。

 

これを読んでくれたあなた。

ひとりで抱えず、わたしたちと繋がりませんか